美那からのアプローチ
コスプレイベントで私と妹に声をかけてくれたことがきっかけで、プライベートでも遊びに行く仲になった美那。出会った当初は関ららら18歳の高3、美那16歳の高1でした。私が18歳で車の運転免許を取ってからは親の車を借りて、片道40分程離れた美那の実家まで送り迎えをしていました。私と美那は高校に通いながらバイトをしていたので、バイト代をコスプレと遊び代に充てていました。
妹抜きでふたりで出掛けたり、ほぼ毎日美那とLINEをしたり(たしかこの辺りからLINEが普及し始めた気がする)バイト終わりに電話したり頻繁に連絡を取っていました。美那は私と妹のコスプレに併せるためにバイトを頑張っていました。イベントの日は3人で予定を合わせて一緒に出掛けていました。私と妹ふたりのコスプレ個人サイトに、美那との3ショットが掲載されることも多くなっていました。
学校関係で美那だけイベントの予定が合わないこともありました。その時は今まで通り私と妹2人でイベントに行っていましたが、同ジャンルで私と妹が別のレイヤーさんと写真を撮ったり、それを当時のSNSサイトに上げるとかなり嫉妬していました。

イベントでまたらららとウメちゃんみんなに囲まれてチヤホヤされてたんでしょ?
あたしも行きたかった……

美那は学校行事だったから仕方ないよ。
次は一緒に行こうね!
※ウメちゃん:関らららの妹
最初は嫉妬したり拗ねたりして可愛いなーと思ってました。しかしお互いの都合が合わずにプライベートやイベントなどに行く期間が空いてしまって久々に会った時、美那から抱き着かれたり、腕を絡めてきたり、私に密着してくることが増えました。プライベートのお出かけやイベントでも私にくっついて来るようになったのです。美那は猫のような性格の子だったので、私も「美那はかわいいね~」とあやしながら歩いてました。私と一緒にコスプレをしている妹は「それにしても最近美那ちゃんの距離近くね?」と気にしてました。
出会って1年が経過した頃には私と美那の距離感はかなり近くなっていました。プライベートでドライブしている時も、コンビニやPAで休憩中に私の頬に手を添えてきたり、肩にもたれてきたり、手を繋ぐまではいかないけれど私の手を握ってきたり、ボディタッチが増えてきました。思い返せばアプローチは美那からだったような気がします。この時は私はかなりボーイッシュな見た目をしていて、美那はガーリーな服装を好んでいたので離れたところから見たら男女のように見えていたと思います。
美那からのボディタッチが増えて、美那の匂いを感じることも多くなって、次第に私も意識してドキドキするようになっていきました。気づけば自然と手を繋いで歩くようにもなっていました。友だち同士で手を繋いで歩くことも普通だと思っていたので私はあまり気にしていませんでしたが、駅など人通りの多い場所を歩いていると手を繋いでいるのが不思議なのかジロジロ見られていると感じることもありました。
今まで感じたことのない気持ち
美那と出会って2年が経つ頃、私は20歳になりました。アルバイトから入社した某ドラッグストアの仕事もある程度覚えて来た頃で、給料も上がってよりコスプレや遊び代に予算を捻出できるようになっていました。美那とは相変わらずプライベートやイベントで会っていて、特にイベントでは距離の近さを妹に指摘されて「ふたりとも付き合ってるの?」と言われることもありました。コスプレした私のことを美那はずっとかっこいい!と褒めてくれて、イベント会場でも私の腕に自らの腕を絡ませて歩いていました。
プライベートで遊んでいたある日の帰り、美那を実家近くまで送る途中で美那から寄り道をしたいと言われ、美那の案内を聞きながら車を走らせていました。着いた場所は美那の実家近くの人気のない拓けた空き地。車のエンジンを切ると助手席に座っていた美那が運転席側に身を乗り出してきて、美那の頬が私の頬に触れました。

急にどうしたの!?

まだ帰りたくない…
らららと一緒にいたいなと思って…
恥ずかしそうに笑う美那を見て、胸の奥が刺されたように痛みました。この時、私も美那に触れたいと初めて思ってしまったのです。10代の頃、私は他人に全く興味がなく、彼氏がいたことも誰かを好きになったこともありませんでした。けれど美那の匂いにドキドキするようになってしまったし、美那の手の温もりを感じてもっと触れたいと思ってしまったし、抱きしめたいとも思い始めてしまいました。お互いの頬が触れて美那の吐息を感じた瞬間、私は気づいてしまいました。

今、私、美那にキスしたいって思っちゃった……
自分でも驚きました。自分が誰かに触れたいと思ったのはこの時がはじめてだったのです。相手は同性だし、これが好きという感情から湧き上がっているものなのか、それとも欲なのか判断ができませんでした。ドキドキはしてるけれど胸の奥がツンとするような切ない感じがしました。私から顔を離して、美那の髪を撫でながらなだめました。

そんなことしたら人肌恋しくなっちゃうでしょ!
そろそろ親御さん心配する時間だから帰ろうね

うん…わかった
少し寂しそうな表情をする美那を見て苦しくなりました。自分でもはじめての感情だらけで頭がぐちゃぐちゃになっていたのです。頬をくっつけてきた美那の行動に、どう返せば正解だったのかわかりませんでした。実家の前まで送り届けて、車で40分かけて私も実家に帰宅してお風呂に浸かりながらずっと美那のことを考えていました。
時間をかけて私は美那へ抱いている気持ちを整理しました。美那の顔を見ると可愛いなぁと思うし、会えるとすごく嬉しいし、いい匂いがしてずっと隣にくっついていたいと思う。バイトで帰りが遅くなっていたりすると心配してしまう。学校で異性に声を掛けられた話を聞くと少し嫌な気持ちにもなった。コスプレのイベント会場で美那が他のレイヤーさんに声掛けられるのを見るとちょっとモヤモヤする。抱きしめたいし、キスしたいとも思う。仕事以外の時間、ずっと美那のことを考えてしまっていました。

相手は女の子だけど、私は美那のこと好きなのかもしれない。
でも美那にそんな気がなかったらどうしよう。
好きって言ったら今の関係終わっちゃうのかも…
美那のことを想って苦しくなるこの気持ちは、恋愛感情によるものだとはっきり自覚しました。美那とは一緒にコスプレをする仲だし、プライベートでも色んな所に遊びに行く仲。妹も美那と一緒にコスプレするのを楽しんでいました。いつの間にか美那は私にとって大親友と呼べるような子になっていました。私が正直な気持ちを打ち明けて、今の心地よい関係が崩れるのが怖かったのです。
美那への好意を自覚してからも私が美那に取る態度は今まで通りで変わりませんでした。美那が私にくっついてくることがほとんどなので、「美那は甘えん坊だね~」「猫みたいだね~」と言って可愛い可愛いと言っているような感じです。自分から美那に触れることができなかったので、美那からベタベタくっついて来る時は私からも触っていいのか葛藤していました。気持ちを悟られないように今まで通り…そう意識して美那と接していました。
けれど日に日に大きくなる美那への恋愛感情に押しつぶされそうになって、ひとりで泣いてしまう夜が増えました。ずっと好きという感情を押し殺して美那の隣にいるのが辛い。美那はベタベタしてくるけどそこに恋愛感情はないのかもしれない。美那に触れたい、好きって言いたい…。いっそ自分の想いを全て吐き出して拒絶されてしまったほうがマシかもしれない…。同性が好きだなんて気持ち悪く思われるかもしれない。そう考えて妹には一切美那のことで相談ができませんでした。
ひとりで悩んで悩んで、毎日泣いて。こんな苦しい毎日を過ごすのなら、私が自滅する前に、美那に気持ちを伝えてしまったほうがいい…。美那とふたりで遊びに行く日に、美那に正直に気持ちを打ち明けようと決心しました。


